痛みは本物だ

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ASMR論

ここ1年ぐらい、ASMRの耳マッサージ音声にハマっている。というか、これ聞きながら寝るのが週に5日ぐらいあるので、ハマってるというか、もうほぼルーティン化しつつある。

 

現在は自分の好きなマッサージ音声を上げている人の音声を自分で編集し直して、ベスト盤を6パターンぐらい作って、それをそのときの気分に合わせて聴いてる。

 

今日はASMR(本稿では言及がない場合、耳マッサージ音声を指す)について語ろうと思う。

 

※注意※本稿は主観ゴリゴリなので、合う合わないがあります。

 

 

 

 

まとめ

  • ASMRは文章。想起性が大事。
  • 作りたい音によってマイクを選ぶ必要がある。
  • マッサージする前に何をするのか言う。
  • マイクをカメラに収めて動画をアップロードしない。
  • まとまりのある音がするカナル型のイヤホンで聴こう。

 

 

  ASMRとは文章である

最も重要なASMRの概念は、ASMR音声は基本的に疑似体験を目的としている訳であって、“実際の音を聞いているわけではない”ということである。

「ポテトチップス・焼き肉味」は焼き肉の味がするのではなく、焼き肉を“想起させる”味がするということ。

ASMR音声は実際に耳をマッサージした時の音声が鳴る必要はなく、“触られている感覚を想起させる音”がする必要がある。

音を提供するというよりも、音の情報を提供するという性質の方が強く、映画よりもアニメやマンガ的だし、アニメやマンガよりも、小説的である。美女を伝える時に文章で美女を表現する力はそのままASMRに役立つ。

 

これを、想起性と呼ぶことにする。

 

ASMRにおける良い音

色んな価格帯のバイノーラルマイクの音声を聞いたが、確かに高くて高品質なマイクは明瞭でリアルな音がするが、その音自体の想起性が低いことも多かった。

 例えば、耳マッサージにおいて、耳を塞いだとき、音としては低域の恒常的なノイズが60~80hz中心に乗る方が、しっかり包まれている感覚があり、気持ちよく聞こえる。だが、例えばNEUMANN KU100(100万円します….)だと100hz付近が中心で、少し弱く感じる…。

(またKU100は耳模型のシリコンが柔めに作られているようで、全体的に音が軽く聞こえる。)

耳の周りでささやく声などは良く聞こえるが、ことマッサージにはあまり適していないように思う。

マッサージ音声の神髄は低音

マッサージの神髄は基本的に低音にある。それは簡単な話で、手自体から発せられる音が低音だからだ。

耳を手で塞いだときと、物を使って塞いだときの音を聞き比べるとすぐに分かるが、塞いだときに鳴る低音は手の筋肉の音である。低音が正しく鳴るというのは、すなわち手の想起性が高いということになる。なので、低音はことマッサージにおいては、非常に重要な要素なのだ。

 

 

 ASMRの録り方

ここで言いたいことは二つ。

・音自体に意味を役割を持たせること。

・音自体の想起性を損なわせないために、マイクを見せないこと。

 

 音自体に意味を役割を持たせること。

音単体で聴くと、動きのあるノイズにしか聞こえない音声でも、「耳をマッサージしている」と言われれば、そう聞こえるのがASMRであるため、まずはその音が何を目的としているのか、その役割を伝える必要がある。

なので、マッサージする前に何らかの形で、今からどういう役割の音が鳴るのかを説明する必要がある。個人的に最も良いと思うのは、ロールプレイ調に「今から○○のマッサージを行いますね」と音声の中で言ってしまうことだ。これが最も分かりやすく、現実的で、その場その場での対応をしやすい。

他には音声の説明文に書くことだ。youtubeなら「10:15~15:45 耳裏マッサージ」など書いてしまうこと。ただ、これは聴者が自分で確認する必要があるので、何の音なのか分からなくなった時に、確認し直さなければならないデメリットがある。また、複数の音を早いスパンで入れ替えながら行うことも不可能になる。

なので、個人的には音声の中で喋ってしまい、マッサージするのが一番自然で良いと思う。

 

 音自体の想起性を損なわせないために、マイクを見せないこと。

 これは非常にゆゆしき問題だと思う。というのも、youtubeでASMRが流行りだしてからというもの、バイノーラルマイクをカメラに収めたままアップロードする人が絶えない。

本稿で何度も触れているようにASMRは想起性が重要であるのだ。バイノーラルマイクをカメラに収めるというのは、マジックのタネを教えながらマジックを行うようなもので、業界全体のマイナスになっていると思う。(大げさではなく)

マジックで考えれば興ざめするのも納得だろう。「あなたがサインした世界に一枚のカードをデッキの真ん中にいれます。でも、もうすり替えてあるので、真ん中に入るカードはあなたのカードではありませんよ。でも入りました。」なんて言われるマジックが面白いのか。種明かしはたった1度だけ“別の角度で”面白いのであって、マジックそれ自体の面白さではない。

ASMRにも同じことが言えるだろう。ASMR動画にバイノーラルマイクを映してはならない。 

ASMRの聴き方

個人的にはカナル型のイヤホンでバンド感の強い、まとまりのある(分離感が薄い)イヤホンで聴くことをおすすめする。

私の環境はGRANBEAT DP-CMX1にSHURE SE215である。ただ、SE215は発売してすぐ買って、今の今まで使っているので、もう新品と同じ音はしない。とはいえ、方向性としては、バンド感の強く分離感が薄いカナル型のイヤホンで聴くと、低音と高音のまとまりが自然で心地よく聞こえるだろう。

普段の音楽はSHURE SE535で聴いているのだが、これでASMRを聴くと、解像度と分離感が高すぎて、とても不自然に聞こえる。普段の音楽を聴くときはモニタースピーカーで聴く感覚がほしいので、バッキバキに解像度が高くて分離感が強くて――というのを求めているのだが、ことASMRにおいては、それらは全ていらない要素だ。

SE535で聴くと、録音者の部屋の恒常音(空調やPCのノイズ)が目につく(耳につく?)ことも多く、やはり適していない。

 

 

[おまけ]イヤホンの話

 

SE215はASMRだけでなく、音楽も非常に心地よく聞こえるし、価格も1万円前後と手を出しやすい価格帯で非常におすすめである。

これが発売されたのは2011年の4月らしいので、もう8年ほど使っていることになる…。

SHUREのSEシリーズはケーブルを交換できるので、断線してもケーブルだけ買い直せば、使い続けることができるので、トータルで考えたら安い。

SE535買ったのが1年前で、それまではSE215をずっと使っていたので、7年間フルで使って、特に丁寧に扱ったりしようなどと意識せずにいて、断線したのは3回だった。

Special Editionもあるが、そこはクオリティでなく好みの差に思う。無印の方がハイが自然な印象。

  

SHURE イヤホン SEシリーズ SE215 カナル型 高遮音性 クリアー SE215-CL-A 【国内正規品】
 

 

 

 

 

 

まとめ

  • ASMRは文章。想起性が大事。
  • 作りたい音によってマイクを選ぶ必要がある。
  • マッサージする前に何をするのか言う。
  • マイクをカメラに収めて動画をアップロードしない。
  • まとまりのある音がするカナル型のイヤホンで聴こう。

*最後で申し訳ないが、耳かき系の音は嫌いなので、耳かき系の音が好きな人たちは、真逆なことをやっていけばよいと思う。